BLOG・BLOG

東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

ゼノブレイド2は何が惜しかったのか。

ゼノブレイド2、ゲーム性だけで言えば正直、他のスイッチキラータイトルである、ゼルダやマリオにも負けない出来の素晴らしいゲームであることは疑いようがないと思う。

ラスボスを倒したプレイヤーでさえ「こんな場所あったのか」と驚くような秘境が、あちこちに隠されている広大なマップ、景色、モノリスらしい、リアルタイムとターン制が混ざったような戦闘システム、いずれもゲーマーの心を刺激して仕方ないものだ。
だが、同時にこのゲームには「惜しい」という声も多く聞かれるのではないだろうか。

おそらく、惜しいという声の大半は物語に向けられたものだろう。

実際、ゼノブレイド2の物語は、全体的にいろいろおかしかった。言ってしまえば、ゼノブレイド2の物語は何を魅力にしたいのか、よく分からない物語だった。


なぜ、こんなことになっているのか。
ゼノブレイド2は一体、何が惜しいのか。その原因を分析し、二つの根本的な問題に気づいたので列挙したい。


・物語とゲームシステムが一致してなさすぎる。

 前述したように、ゼノブレイド2はゲームシステムに関して100点の出来栄えなのだが、これが物語に活かされてなさすぎる。

 例えば、ブレイドを他のドライバーに移すことができるオーバードライブというシステム。これがゲームシステムでは存在しているのに、ゲームの物語上では存在しないことになっている。

 他にもせっかく、戦闘システムではドライバーのアーツと、ブレイドの攻撃を組み合わせ、仲間と次々コンボを決めることで大きなダメージが与えられるシステムにしているのに、本編でこれをやっている箇所がないなど、様々なゲームシステムが本編ムービー内では無いことになっているのだ。

 

 だから、どうしても物語に没入感がない。さっきまでプレイヤーがやっていたプレイと、物語上での登場人物の行動に食い違いが多すぎるせいで、なんだか「関係ない別の物語が、ゲームの間に挟まっている印象」を覚えてしまう。

 

 特にオーバードライブに関しては、なぜ、本編中では無いことになっているのか、よく分からない。

 オーバードライブが存在していない扱いのせいで、本編はいちいち、主人公側にブレイドを渡すためだけに、誰かが無意味に死んだり、生き返ったり、ツッコミどころだらけの生死を、物語上で繰り返す羽目になっている。

 ひょっとすると、作り手としてはオーバードライブという技術を物語上では無かったことにすることで、ドライバーとブレイドの絆が描ける……という目算だったのかもしれない。

 が、正直言って「オーバードライブで、人にブレイドを渡すことが出来るけれど、それでも思い出が大事だから渡したくない」方がよっぽど絆を深く感じられる。目算がそもそも間違っているのだ。
 
ゲームシステムには、ドライバーとブレイドの絆を強調させるような要素が多々あるのに、これをまったく本編で活かさない。
これは正直、無いだろう。

 


・言うほどボーイミーツガールしてない


 ゼノブレイド2は、ボーイミーツガールの物語だ。これには反論の余地はない。確かに物語はどう見てもそれを目指していることが分かる。

 ただ、ボーイミーツガールとして出来が良いかは別だが。

 正直、僕にはこのゲームの作り手がボーイミーツガールを得意としているようには思えないのだ。ボーイミーツガールには、ボーイミーツガールらしい物語を作るための「コツ」があるのだが、ゼノブレイド2はこの「コツ」を、完全に外している。

 

 当たり前の話だが、ボーイミーツガールは「少女のために少年が戦う話」ではない。「少年少女の出会いをきっかけに、少年少女が世界と出会って、少年少女が成長する物語」だ。

 だから、少女と少年の成長をいかに描くかが「コツ」となる。

 そして、成長の過程でどうしても必要なのが「迷い」である。迷わない人間に成長はない。ボーイミーツガールとは、つまり「少年少女の迷い」が肝なのである。
 
 で、ゼノブレイド2のレックスとホムラは、いじけたりするものの、迷うことがなさすぎるのだ。どちらもまったく悩まないし、葛藤しないのである。

 例えば、「ホムラの言っていることが正しいのか?」とか「ホムラは自分が本当に好きなのか?」とか「戦争しそうな中で、自分は楽園に行くとか言ってて大丈夫なのか?」とか、「レックスを信用して良いのか?」とかいくらでも迷うことが出来そうなのに、迷わないのだ。

 迷った上で悩んで葛藤して成長して、それでも最後は相手を信じよう。だって、相手が好きだから!となる。それがボーイミーツガールの醍醐味ではないか。基本的にはボーイミーツガールとは、冒険とコッテコテの恋愛劇を合わせたものなのだから、主人公とヒロインはある程度すれ違いを起こさなければ、魅力がないだろう。

 ゼノブレイド2はそこをなぜか、間違えている。


以上、二つがゼノブレイド2の物語が持つ、根本的な欠陥である。

 細かい部分に対しても文句はあるが、おそらく、上記二つさえ良ければ、多少の疵があったところで「それが?」と思えただろう。悪役などのキャラクターが良く出来ているだけに惜しい。本当に惜しいのだ。