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東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

AbemaTVの72時間テレビは、本当にテレビの終わりを意味しているのか。

 ジャニーズの内乱やらなにやらについては、とんと興味がない自分だが、それでも今回の72時間テレビの行方は非常に気になっていた。

 まあ、みんな、だいたい感じていたことだと思うが、このSMAP分裂解散騒動に端を発し、回り回って行われることになったAbemaTVの企画は、「新しい時代の転換」を感じさせるものだった。

 

 自他共に文句なく認める、国民的スターが積極的にネット活動を始めるーーユーチューバーになる、なんて、前代未聞だったからである。その皮切りとして、この「三日間、インターネットTVで連続生放送」という盛大な花火が打ち上がる話を聞いたとき、誰もが思ったはずだ。

 これは絶対、時代が変わると。

 で、自分もそのように感じていて注目していたのだが、今回、この72時間テレビを実際に見ていく中で、自分は自分の中にあった「大きな誤認識」に気づいたので、それを書いていきたいと思う。

 

 自分はずっと72時間テレビは、「テレビからネットへの変遷」を意味していて、なおかつ、これは「テレビvsネット」という構図を明らかにするものなのだと思っていた。だが、どうもこれが違うようなのだ。

 テレビがネットと対立していないのである。それどころか、協力的なのだ。

 これは72時間テレビ、フィナーレの72曲ライブで明確に現れていた。

 

72曲ライブは、以下の楽曲を新しい地図の三人が歌っていた。

1.学園天国
2.バンザイ~好きでよかった~
3.今宵の月のように
4.innocent world
5.キセキ
6.イージュー★ライダー
7.あの素晴らしい愛をもう一度
8.Around The World
9.WON'T BE LONG
10.WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~
11.ガッツだぜ!!
12.CHE.R.RY
13.涙のリクエスト
14.Love Somebody
15.スリル
16.ラブリー
17.OH MY LITTLE GIRL
18.Diamonds
19.HELLO
20.愛してる
21.サイレントマジョリティ
22.打上花火
23.恋
24.少年時代
25.青空
26.僕の見たビートルズはTVの中
27.奇跡の地球
28.SOMEDAY
29.いつか
30.涙のキッス
31.不滅の男
32.ひまわりの約束
33.Romanticが止まらない
34.PONPONPON
35.R.Y.U.S.E.I.
36.前前前世
37.愛は勝つ
38.君をのせて
39.Hello,my friend
40.いつかのメリークリスマス
41.恋しくて
42.アララの呪文
43.やつらの足音のバラード
44.心の旅
45.さらば恋人
46.ハナミズキ
47.歌うたいのバラッド
48.ら・ら・ら
49.ultra soul
50.負けないで
51.HOWEVER
52.PRIDE
53.いとしのエリー
54.翼をください
55.ヘビーローテーション
56.LOVE マシーン
57.ピンクスパイダー
58.Don't wanna cry
59.君がいるだけで
60.歩いて帰ろう
61.時の過ぎゆくままに
62.強く儚い者たち
63.クリスマスソング
64.とんぼ
65.Runner
66.大迷惑
67.止まらない Ha~Ha
68.ファイト!
69.チェリー
70.上を向いて歩こう
71.雨あがりの夜空に
72.72

  SMAP時代の曲が歌えないために、代替として歌ったとのことだが、ここで自分が注目するのは、これらの楽曲の「出版権」を持っている会社である。

 ーーと、ここで一旦、出版権についての解説が必要かもしれない。出版権とは簡単に言って「作曲された曲の楽譜等々を管理する権利」である。これらを所有している人は「その曲を例えばスコアブックなどに載せていいかどうか、その曲をライブで使っていいかどうか」などを許可・拒否することができる。

 つまり、ライブで曲を使うには、作曲者本人ではなく、この出版権を持つ人に許可を取らなければいけない。

 

 で、ここから音楽業界のカラクリがあるのだが、実は世の中のだいたいのアーティストは、この出版権を大抵、自分の所属する芸能事務所やレコード会社、楽曲を作る際に出資したテレビ局の子会社などに譲渡している。

 これでピンと来る人も多いのではないだろうか。

 

 そう。この72曲も9割の曲は、芸能事務所やテレビ会社の許可がなければ使えない楽曲なのである。*1

 本当に「テレビvsネット」の構図があるならば、こんなライブは出来るはずがないのだ。実際、72曲の中にはバーニング、アミューズ、エイベックス、テレ朝、フジ、TBSなどが出版権を所有している楽曲が含まれている。

 これらの会社は、今回のAbemaTVと新しい地図の行動に難色を示していないのだ。特に72曲の中には、目立つほどにフジの所有する楽曲が多く、今回の72時間テレビ企画に対して、裏で手を回していたのが誰だったのかを察することが出来る。

 

 この時点で分かるのは、テレビ局はもはや「ネット動画」「ネット配信局」の存在に関心を寄せ、近づこうとしている段階だ、ということだ。

 つまり、「テレビvsネット」ではない、ということ。

 むしろ、落ち目になったテレビ局が生き残りを狙って「ネットに賭けてきた」という動きさえ見てとれる。

 一体、誰が生き残るのだろうか。

*1:エンケン矢沢永吉、RADの曲など一部例外もあるが