風景画は描くのが楽
こんなことを言うと怒られそうだが、絵を描いていて気がついたのは、「風景画は、描くのが死ぬほど楽だ」ということだ。少なくとも人物画と比べるとすっごい楽なのである。それは、なぜか。
なぜかというと、「不正解の線が、あんまりないから」である。
絵というのは、必ず、どっかで「だいたい合っていればいい」という妥協点が存在するものだが、風景画はこの許容度が高いのである。いや、違うな。正確に言えば、「人間の脳はあんまり風景を気にしていないので、多少違和感があっても気にならないから問題がない」というのが正しいだろう。
人物画(とくに顔)の絵は、線が数ミリズレただけで大事になる。顎が正解から少しズレる。下のまぶたが正解から少し外れる。これだけで、途端に顔の絵には「全体的におかしな印象」「全体的に素人くさい印象」が漂い始めるのだ。
逆に言えば、そこをちょっと直すだけで、途端に違和感のない絵に様変わりしたりするのが顔を描くことの面白さでもあるのだが、風景画は多少線を細かく変えたところで大きく「あれ?」って思うはあんまりない。よくよく見てみると、部分的におかしいぞ、と思うだけで、全体の印象までおかしくなることはないのだ。
この許容度の高さは、風景画独特の面白さだ。自分のイマジネーションに従って、あることないことを、描きまくれる面白さがある。