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BLOG・BLOG

東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

掌編:サーカス

小説

 今年のサーカスの一団は奇妙だ。ピエロがまずいないのだから、そして、ライオンがいないのだ。次にバレリーナもいない。体操選手、いるわけもない。団長がそもそもいない。酢を好んで飲んでもいない。空中ブランコの曲芸師たちも、見当たらない。そして、なにを思ったか、ただ、普通の人だけがいて、ボールの上に乗ってわざと転んでみたりしてピエロのフリをしたり、爪をむき出して柱を引っ掻いたりしてライオンのフリをしたり、足を真横に広げたままくるくると回ってバレリーナのフリをしているのだ。曲芸師のフリをして、高さ二メートルのブランコに足を下げる者もいる。そして、統率を取るかのようなフリをして、腕組みし、見守る団長が居る。

 しかし、悪いが、私が見てきた限り、ピエロもライオンもバレリーナも曲芸師も、そして団長も、去年のサーカスではそんなことなどしていなかった。

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