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BLOG・BLOG

東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

好きな作家について書く(1)

だけでもネタになるのか!

 

 と、いろんなブログの記事を見て、気が付いたので僕の好きな作家を発表したいと思う。ランキング的な形式とか、そういうの面倒臭いんで、無視しますが、とりあえず…

好きな作家:国内編!

  蘭郁二郎

 SFというジャンルが、日本で成立する前。そんな時代に何人かSF気味な、SF的な小説を書いていた作家が存在しているのだけど、その中の一人がこの蘭郁二郎だ。探偵小説を書く作家として始まり、次第に、海野十三を目指すようにSF系の話を書くようになっていった作家なのだけど、僕はとにかくこの人が好きなのだ。

 この人の何が好きか。それは文体だ。大抵の場合、蘭郁二郎というと好きな人は、夢鬼などに代表される耽美な、SMとかやっちゃうような変態的な世界を好きという人が多いのだけど、僕はそうじゃない。蘭郁二郎は、特に、後期の蘭郁二郎はとにかく文章が上手いんだ。どれだけ上手いかというと、例えば太陽の島では、

遥かに残波岬まで続く黒檀のように黒い陸のかげが、濃紺色の夜の海をへだてて月の光りの中に浮かんでいるきりだった。

しかし、なんと貧弱な島であろうか。少し大きな波でも来れば、ガブリと島全体が波の底に呑まれてしまいそうだった。

(どちらも新仮名遣いに直して引用しています) 

 なんて、ことをサラッと書いちゃうくらいに上手いのだ。今読んでも、なんてレベルの高い文章表現だろうと思う。蘭郁二郎は初期の耽美さや変態的な世界ばかりが称揚されがちだけど、こういうところも、キチンと評価すべきだと思う。本当に、毎回、読むたびに文章の教科書として参考にさせてもらっている。それくらいのいい表現が詰まっている作家が、蘭郁二郎なのだ。

怪奇探偵小説名作選〈7〉蘭郁二郎集―魔像 (ちくま文庫)

怪奇探偵小説名作選〈7〉蘭郁二郎集―魔像 (ちくま文庫)

 小田雅久仁

 大好きな作家である。日本ファンタジー大賞を受賞し、作家としてデビューされた方なのだが、まあ、すんごい執筆された作品が少ない方だ。デビューからだいぶ経つが、未だに単行本化されているのは、デビュー作の「増大派に告ぐ」とその次の作品「本にだって雄と雌があります」のみで、あとは、ちょいちょい文芸誌に作品が掲載されている程度しか作品を発表してない作家だ。しかし、毎回毎回、良い作品を書く人でもある。

 しかも、単行本化されている二つの作品はどっちもかなりテイストが異なる。増大派に告ぐはハッキリ言って、内容としては、ほぼ、syrup16g「負け犬」*1みたいな内容だ。アゴタ・クリストフコーマック・マッカーシーが好きという作者にふさわしい、読んだら、心が根元から折れること間違い無しのハートブレイカー小説の傑作だ。

 だというのに、「本にだって雄と雌があります」は一転し、これがハートフルな小説になっているのだから、驚きだ。実際、作者自身はどうも、イマイチこの小説を気に入っていない節があるようなのだが、ともかくとして、喩えるならば、”より芸術的センスが増していて残酷な面も見え隠れする森見登美彦”というか、そんな小説で、ラストシーンで胸がじーんとなるという、大変によく出来た、こちらも傑作なのだ。

 ハッキリ言って、僕はどちらの本も堪らないほど好きである。だからこそ、次の単行本出してくれると嬉しいんだけれども、と思う。今ちょうど、SFマガジンで長城を連載しているところなので、そろそろ、出るんじゃないかなと目星を付けているんだけど……。

本にだって雄と雌があります

本にだって雄と雌があります

 平山夢明

 ここらへんで、「あ、こいつ、そういう作家が好きなのか」と思われそうだけど、まあ、そうである。平山夢明、この作家の名前を知っている人は意外と多いのではないだろうか。なにせ、東京FMでラジオ番組をやっていたり、ちょっと前にテレビにも出たことがあるような作家なのだから。

 平山夢明もものすごく好きな作家だ。基本的に文体は、残酷。描写は、常に糞尿と血糊と脳漿まみれで、話はじわじわと読んでいる人に、病的ななにかを注ぎ込もうとしているものばかりという、おそらく日本国内の小説における残酷描写のレベルを、5段階くらい一気に上昇させてしまった元凶そのものだと思う。

 しかも、憎いかな。平山夢明は残酷なだけじゃなくて、書く小説の話が「一体どこからそんな発想が湧いてくるんだ?」と奇妙に思うほど、ヘンテコで、しかも面白いのである。一歩間違えれば、ホラーやミステリー作家ではなく、シュールレアリスム作家として認識されていてもおかしくはないはずだ。実際、「独白する横ユニバーサルメルカトル」などの作品は、かなりシュール。だが、シュールだというのに、いわゆるブンガクの香りがせず、血の気しか覚えないのだから、本当に不思議な作家だ

 

他人事 (集英社文庫)

他人事 (集英社文庫)

 

……と、白熱して文章を書きすぎた。

好きな作家については、またいずれ続きを書きたいと思う。

じゃ!