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東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

掌編:欠陥品

 冷たい指を触れてみる。指紋の微妙な凹凸があり、その指紋は、私の指紋と時折噛み合うような、ズレるようなこそばゆさだった。私は肩を震わせた。手の甲に、ゆっくりと円を描く、真円ではない。幼児が描く撥条のような、曖昧な螺旋を書き付けた。反応はない。私がため息をついて、首の後ろに手を回す。小さい突起の感触があり、爪先で引っ掛けて、それを引っ張った。電源が入る。

「おはようございます」

「おはよう」

「はじめまして、お名前は?」

「全部やり直しなのね」

 欠陥品はこれだから困る。