掌編:空
空を掘って、抜け出すことを考えたのはいつのことかよく覚えていない。ともかくとして、その日、僕は空が土塊のように、ベタッとした質感のなにかであることに気づき、そして、長いスコップでコツンと先を啄いてみたりしたのだ。
ボロボロと取れていく空。僕の顔に、青いそれがいくつも落ちてきて、すっと冷える。あまりにも体が冷えてしまうので、これは風邪を引いてしまいそうだった。実際、数時間後には、用もないのに体が震えてきて、芯から妙な熱が込み上げてくるのが分かった。風邪を引いたのだ。
三日後には、ベッドの上で寝ていることになった。白いシーツの中、僕は鼻水を垂らして沈黙する。時折、啜る。基本的には、マスクを付け、頭には冷たいアイスシート、体温は上がり続け、夢うつつの中、朧気な視界、だんだんと緑色に染まっていく、自分の認識を覚えながら、夕靄色の窓から空の光景を見る。陽が沈もうとしているのだ。
それは困ると思いながら、布団の中に入る。
眠い。
困るが眠い。
やがて、睡眠に入り、僕は目が覚めた。
そうだ。やろう。