掌編:口論
「あんまり、はしゃいで走り回るのはやめなさい。みっともないわ。ほらほら、あなた、あんまり走り回るものだから、音程が変わってるじゃないの。あなた、キャーッでしょ。キャーッの黄色い悲鳴なのに、ちょっと音程上がって、それじゃどちらかというと、キィーッよ。あなた、キィーッさんになってるわよ」
「はぁ? キィーッとか、マジ、ウケるし。言ってることイミフじゃん。私、キャーッだし。キィーッじゃないし。知らねーっつーの」
「本当になってるのよ。いいから、ちゃんと人の話は聞きなさい。キィーッって聞こえてるわよ今のあなた」
「うぜー。バカじゃないの。ババアの方こそ、喋りすぎて、クスクスじゃなくて、ゲスゲスって感じだけど」
「まあ、ゲスゲスとはなに? それが親に向かって言う言葉なの?」
「言葉ぁ? はぁ? マジウケるし。言葉とか。ウケるわ」
「ちょっと、ちょっと、話はちゃんと聞きなさい」
「話はぁ、ちゃんとぉ、聞きぃなさぁい~とか、ぷっ。ぷっ」
「いい。そんなんじゃ、外に出たときキャーッだって思われないわよ。本当にキィーッと思われちゃうのよ。それいいわけないでしょ」
「別にぃ。私、友達の間でちゃんとキャーッだって解ってるし、別にそれで問題無いじゃん。うっぜーな。きめーんだよ。あー、きめぇ。うぜー。ははっ、ババアのゲスゲス、クソウケる」
「もういいかげんにしなさい。なんて子なの」
「うるせーな。騒音のくせに、マジウケるし」
「あ…」
「あ…」
二人とも、ボエーッってなって、出て行った。