掌編:トンネルの中は真っ黒
トンネルを抜けると、拔ける前に私はとっくに死んでいた。なぜだろうか。
そうだ。
なぜかと言えば、殺されていたからだ。
殺された理由は、簡単で私が彼の財産を奪ったからである。
いくらほど奪ったかというと10億だ。これほどの大きい金額ならば納得だろう。
誰に殺されたかというと、客として紛れていた健吉である。
健吉は誰かというと、敵である。
互いに職を失ったときに、手元に残っていた莫大な財産を奪い合い、最終的に私が10億円奪ったのである。
互いに企業したときには彼の会社を真っ先に潰した。
彼とは、一人の声を取り合ったこともあったと思う。
そういう敵であった。生涯の敵であった。
いつから出会ったかと聞かれれば、中学生の頃である。
その前は彼とは知り合わなかった。
ともかくとして、私は死んだ。彼に殺されたのだ。
さらばだ。
抜けることのできなかったトンネルの中、ここは真っ黒である。