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東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

掌編:棺

 死体が腐らなくて困っていたのだという。某国の話である。そこは基本的に死体は土葬であった。手厚く、丁寧に葬ることが死者への手向けという、国だった。だが、丁寧に葬っていたのがまずかったらしい。無菌状態の棺では、死体が腐らず、次の死体が入れないのだという。そこで、妙案として、腐っていない死体を腐らせるため、墓に特製のストローを刺したという。そこから、気体の薬剤を入れ、ゆっくり死体を溶かして、スペースを空けるのだ。無事、どの死体も溶けてくれたという、腐ってくれたという。喜ぶ人たちを前に、なにか、強烈に根本から間違っている違和感を拭えないが、しかし、違和感がなんだ。世界には無駄しかない。黙って飲み込むのみである。