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東杜来のブログです。月に1,2回の更新。

2014年に読んだ本

一年間で115冊読みました。

2014年の読書メーター
読んだ本の数:115冊
読んだページ数:26715ページ
ナイス数:178ナイス

妖獣都市 (徳間文庫)妖獣都市 (徳間文庫)感想
面白かった、以上の感想はなし。
読了日:12月30日 著者:菊地秀行
アプレゲール (novella*1200)アプレゲール (novella*1200)感想
「はぁ…そうですか」としか言えない。
読了日:12月29日 著者:軒上泊
殺人出産殺人出産感想
全体的に面白く読んだ。従来、性とセックスと恋愛と出産は、当然のごとくワンセットで語られるものであったのだけど、この小説では、そのワンセットを、それぞれに分けて、捉え直そうとしている。そのための、この特異な舞台設定と、社会像。ワンセットで語られていたそれぞれが、実は、まったく異なる性質を持っている概念なのではないかという示唆。ただ、設定の煮詰めが甘いというか。社会学的、経済学的な知識がないまま、適当に直感で小説内の社会像を構築してしまっているところがあって、僕個人としては、そこだけが惜しいなと。
読了日:12月28日 著者:村田沙耶香
元気なぼくらの元気なおもちゃ (奇想コレクション)元気なぼくらの元気なおもちゃ (奇想コレクション)感想
面白かった。特に「やっぱりデイヴ」の、どう考えても意味が無いオチのおかしさが堪らない。表題作の展開と、終わり方もかなり好きだ。とにかく、全体的に、読んでいる人を煙に巻いて、からかいたいという作者の衝動がよく伝わってくる。オチのしょうもなさに、笑うしかない。これに腹を立てたら、腹を立てたやつの「負け」である。
読了日:12月27日 著者:ウィル・セルフ
犬と山羊の聖なる夜犬と山羊の聖なる夜感想
うーん。正直、あとがきでも分かる通り、作者の宗教観が浅い…。
読了日:12月24日 著者:エリザベス・マーシャルトーマス
放課後戦役 (コバルト文庫)放課後戦役 (コバルト文庫)感想
うーん。ありとあらゆるものが、微妙。
読了日:12月20日 著者:鷲田旌刀
数学用語と記号ものがたり数学用語と記号ものがたり感想
数学用語って、どういう成り立ちで出来ているんだ、という自分に突然湧いた疑問をこれほどまでにストレートに回答してくれる本があったとは。しかも、意外と細かいところまでキッチリ調べてあって、ただ「西洋ではこう呼ばれていた」という話にとどまらず「そこからどうやって日本に入ってきたか」まで分かりやすく表現している。
読了日:12月18日 著者:片野善一郎
イギリス新鋭作家短篇選イギリス新鋭作家短篇選感想
どの短編も一定ラインを超えて面白いものだったが、特にウィルセルフの「尺度」がなかなか良かった。この、最後の最後、一文でくすりと笑ってしまうあたりがなんとも。他、「エイト・アームズ・トゥ・ホールド・ユー」や「ボスニアン・アルファベット」も気になったが、小説っていうよりは評論に近い内容だったり、解説に載っていた長編の冒頭はあまり感心しなかったりで、結果、この本は、ウィル・セルフを知れたのが収穫だったかなと。
読了日:12月16日 著者:ハニフクレイシ,ウィルセルフ,ティボールフィッシャー,キャンディアマックウィリアム,ローレンスノーフォーク
数学を愛した作家たち (新潮新書)数学を愛した作家たち (新潮新書)感想
文学者――つまり、外部から見た「数学」の姿を追っていくことで、数学とはどういう学問なのかということを、暗に示している一冊。示唆に富んでいて、数学教育の問題点や、数学という学問への偏見と誤解を解いていく。いわゆる雑学系の本とはまったく違うので、雑学が学びたいだけの人は読まないように。
読了日:12月16日 著者:片野善一郎
夢魔 (ブルー・ボウ・シリーズ)夢魔 (ブルー・ボウ・シリーズ)感想
うーん。
読了日:12月16日 著者:ロバートブロック,中田耕治
異世界居酒屋「のぶ」異世界居酒屋「のぶ」感想
うーん。
読了日:12月11日 著者:蝉川夏哉
成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論
読了日:12月8日 著者:山川賢一
ライオンは眠れないライオンは眠れない感想
経済学の知識が論外のレベル。言ってることもまったく論理性がないし、しかも、よりにもよって清算主義推し。挙句の果てには、インフレとデフレの区別さえついていない「デタラメ経済学」。まともな経済学を学んだ人が、1ページにいくつツッコミどころを見つけられるかが、この本の読みどころである。
読了日:12月6日 著者:サミュエルライダー
空虚人(うつろびと)と苦薔薇(にがばら)の物語空虚人(うつろびと)と苦薔薇(にがばら)の物語感想
ルネ・ドーマルの未完小説「類推の山」に入っている話「空虚人と苦薔薇の物語」を、そこだけ抜き取って一冊の本にしたもの。うつろびとたちの不思議な様子等、こういうファンタジーが好きな僕は結構面白く読んだ。物が物なので、異様に話自体は短いのだが。また、言っても、「しょせんは、本来の小説から抜き出された物語だな」と思えてしまうところもあったりするのが欠点か。
読了日:12月5日 著者:ルネドーマル,建石修志
愉しみは最後に: 二人のひどく不器用な自殺志願者の往復書簡愉しみは最後に: 二人のひどく不器用な自殺志願者の往復書簡感想
スーサイド・ショップを公開した後で、次に出したものがこの小説って…。ルコント監督の精神状態がちょっと気になるような。ともかくとして、とても笑える小説だった。なんともまあ、くだらない自殺の方法を、自殺志願者の二人が、微妙にかっこつけた書簡のやり取りで次々思いつくさまといい、とても滑稽で面白い。
読了日:12月2日 著者:パトリスルコント,ダヴィッドデカンヴィル
クラウドクラスターを愛する方法クラウドクラスターを愛する方法感想
うーん。
読了日:11月27日 著者:窪美澄
新装版 UMA大戦 ククルとナギ(3)<完> (KCデラックス )新装版 UMA大戦 ククルとナギ(3)<完> (KCデラックス )
読了日:11月24日 著者:藤異秀明
いつかライオンの夢を―短編ドラマ作法 岩佐憲一の仕事いつかライオンの夢を―短編ドラマ作法 岩佐憲一の仕事感想
岩佐憲一という人はこんな脚本を書いてたんだな。
読了日:11月23日 著者:岩佐憲一
霧に橋を架ける (創元海外SF叢書)霧に橋を架ける (創元海外SF叢書)感想
うーん。
読了日:11月21日 著者:キジ・ジョンスン
ぼんとリンちゃん (竹書房文庫)ぼんとリンちゃん (竹書房文庫)感想
映画版はもっと暗いというか、希望がない形で描いていたはずなのだが、小説版は案外、希望をあっさり描いてしまっていてそこが、マイナスかなと。あと、映画版から足したところの文章は濃密に書いているのだが、映画版の(おそらく脚本からほぼ転載したであろう)文章が割りと雑。もうちょっとちゃんとした文章にすべき描写がいっぱいあったはずなのだが…。とはいえ、まあ、そこそこは面白かった。特にみゆ側の話は、なかなかいいなと。
読了日:11月18日 著者:小林啓一
ウイルス ミクロの賢い寄生体 (サイエンス・パレット)ウイルス ミクロの賢い寄生体 (サイエンス・パレット)
読了日:11月16日 著者:
愉楽愉楽感想
真冬の季節に、真夏のような日差しになるところなど、まさにマジックリアリズム小説。だが、莫言の小説にしてもそうなのだけど、南米文学のマジックリアリズムと大きく違うのは、全体的に、マジックに病的な感じが漂い、そして不条理さが強調されているということ。だからこそ、読んでいると「ためになるはずなのに、体に毒な感じ」がとてもする。そして、そこが素晴らしいところでもある。くどい話も面白かった。印象としては、この小説、この体裁にも関わらず、結構「文章としては読みやすい」方の小説かもしれないなとも思う。
読了日:11月16日 著者:閻連科
郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫)郵便局と蛇: A・E・コッパード短篇集 (ちくま文庫)感想
変わっている、といっても、変わっている作家はいっぱいいるが、特にコッパードが変わっているのは、「話の本筋がいつまで経っても掴めないこと」かなと。特に短編なら、普通は最初の数行で分かりそうなものだけど、この人の話は、本題なのか本題じゃないのかよく分からない微妙な枝葉がいくつもくっついていて、オチを見てようやく「あ、これが本題だったのか」と気付くところがある。この"話立て"も、この幻惑感を醸し出す原因かなと。訳者である西崎氏の文章もさすが、素晴らしい。
読了日:11月5日 著者:A.E.コッパード
My Humanity (ハヤカワ文庫JA)My Humanity (ハヤカワ文庫JA)感想
うーん。
読了日:10月31日 著者:長谷敏司
DRAG-ON DRAGOON 死ニ至ル赤(3) 完DRAG-ON DRAGOON 死ニ至ル赤(3) 完
読了日:10月30日 著者:映島巡
甘い漂流甘い漂流感想
フェリーニの『甘い生活』のような小説だが、主人公は移民であり、「定住しない生活を送る者」だ。なので、この小説は甘い漂流となっている。が、この定住しないという、移民の主人公という視点に変わっただけで、さまざまな物事の意味合いが変わる。退廃的な光景を外から見るだけでも、内側から流されるだけでもない。まさに〈住所が/なければ/街全体が/おまえの/ものだ。〉という。俳句を意識したのであろう文体のおかげか、ほとんどの文が、短いセンテンスで構成されているにも関わらず、不思議と一文一文で、その移民の景色が浮かんでくる。
読了日:10月26日 著者:ダニー・ラフェリエール
新装版 UMA大戦 ククルとナギ(2) (KCデラックス )新装版 UMA大戦 ククルとナギ(2) (KCデラックス )感想
ヤーヤ・トーカーズ!
読了日:10月23日 著者:藤異秀明
吾輩は日本作家である吾輩は日本作家である感想
世界的に日本のカルチャーが流行している中で、日本を批評すれば当然、世界のカルチャーへの批評になるわけで、ここに眼をつけるとは、ものすごく鋭い。そして、なにより、日本に対する分析と評価の的確さ。過剰に礼賛するでもなく、貶すでもなく、本当に真っ直ぐ日本を見つめている。それは、作中の登場人物の行動、言動を見てもよく分かる。日本人ではない作者が「日本作家」になろうとすることも、一つの批評であり、ここから"では、国を取っぱらった上での、その人のアイデンティティとはなんなんだ"という問いまで浮かび上がってくる。
読了日:10月22日 著者:ダニー・ラフェリエール
妙なるテンポ妙なるテンポ感想
「科学的データ」だけが面白かったが、あとの全てはひたすら「ブンガク好きなんでいっちょ書いてやるか」といった感じで書かれているだけで、特筆すべきものがあるかというと、まったくない。
読了日:10月22日 著者:ヴァレリーアファナシエフ
両シチリア連隊両シチリア連隊感想
非常に最後の二章までの(ようは解決に向かうまでの)ドンドンと物語が展開していき、こんな登場人物まで死んでしまうのかと思わせるところはグイグイ読ませる。どっちがどっちなんだかよく分からなくなるような、幻惑させるラストもいいと思う。死に際の登場人物たちの幻想的な語りも悪くない。が、なんだろう。なにかが足りない気がする。真相ではなく、もっと幻惑させるためのなにかが足りない。訳者の解説は…うーん、言ってることが「知の欺瞞」っぽすぎ。個人的には「時間」への記述が多いことが気になる。
読了日:10月21日 著者:アレクサンダー・レルネット=ホレーニア
ブラック微生物学 第3版(原書8版)ブラック微生物学 第3版(原書8版)
読了日:10月21日 著者:JacquelynG.Black
君を回したい。 (講談社コミックス)君を回したい。 (講談社コミックス)
読了日:10月20日 著者:梅山たらこ
民主主義の経済理論 (1980年)民主主義の経済理論 (1980年)
読了日:10月15日 著者:アンソニー・ダウンズ
クールな男 (福武文庫)クールな男 (福武文庫)感想
経済と政治が物語に潜り込み、ときにテーマにさえ出てくるマルセル・エイメ作品だが、このアンソロジーにもその要素は多く含まれている。それでいて、幻想性あふれるというところが、マルセル・エイメの面白さであり、そして、ただ小説をよく読むだけの文学ファンでは"理解しきれない部分"でもある。僕は、特に「ぶりかえし」が大好き。「後退」もなんというか、今の日本の時勢に合っていて、印象に残った。マルタン君物語のマルタンが主人公というのにもグッと来た。うざったすぎる訳者あとがきには、かなりがっかりしたが…。
読了日:10月14日 著者:マルセルエイメ
潜水服は蝶の夢を見る潜水服は蝶の夢を見る感想
映画から入って読んだものだから、想像したものとまったくジャンルの違う本であることに驚かされた。ものすごく短くて、そして、表現も簡素な随筆集。さすが編集者というべきか、文章はとても読みやすい。スラスラとあっという間に読みきれてしまう。さらっとジョークを入れてしまうあたりもなかなか。実は、この本から読み取れるのは、生命の力強さというよりも、「優雅であろうとすることに含まれている強さ」ではないかと思う。
読了日:10月12日 著者:ジャン=ドミニックボービー
マルタン君物語 (ちくま文庫)マルタン君物語 (ちくま文庫)感想
奇抜な話ばかりという、マルセル・エイメの才能が光る短篇集(半連作短編集、というべきか?)最初の「小説家のマルタン」の冒頭で、もうグッと来るわけだが、マルセル・エイメが面白いのは、設定もさながら、その最初に決めた設定から展開される物語自体が、かなり変わっていることである。ヘンテコ小説、というわけではないのだが、「あれ?普通、この設定でそういう話に持っていくだろうか?」と思うような不思議な方向に話が展開していくのである。これが面白さかなと思う。
読了日:10月11日 著者:マルセルエーメ
猫が耳のうしろをなでるとき (ちくま文庫)猫が耳のうしろをなでるとき (ちくま文庫)感想
期待を下回った。
読了日:10月11日 著者:マルセル・エーメ
経済学という教養 (ちくま文庫)経済学という教養 (ちくま文庫)
読了日:10月9日 著者:稲葉振一郎
夜(NOX)夜(NOX)感想
話としては面白かったが、印象的には「ちょっと今からしてみると、古い小説に思えるかな」というところも否めず。ポルノグラフィックな描写が、ベルリンの壁という騒動へのメタファーになっているあたりに、なんだか、少しクレフェルトの「昔は戦争とセックスは同じ言葉で語られるものだった!」という主張を思い出してしまう。
読了日:9月28日 著者:トーマスヘッチェ
時の罠 (文春文庫)時の罠 (文春文庫)感想
うーん。
読了日:9月28日 著者:辻村深月,湊かなえ,米澤穂信,万城目学
私はかうして祈る―人と時と場合に応じた祈り (1956年)私はかうして祈る―人と時と場合に応じた祈り (1956年)感想
昔の自己啓発本。今も昔もこの手の本は内容も構成も大して進歩してないことだけがよく分かる。
読了日:9月27日 著者:谷口雅春
チューリングの妄想チューリングの妄想感想
いかにもラテンアメリカな文体と、機械的アルゴリズムの話が食い合せが悪すぎる。正直、アルゴリズムのことも、かなり悪い方向で誤解しているとしか思えない。それと登場人物のモノローグが多すぎ。特に後半は、これ、酷い。ただでさえ、モノローグがうだうだうだうだ書いてあるというのに、登場人物たちが現在の状況を「説明」するためだけに、ぐだぐだ書いているところもあって、最後らへんは登場人物がなにかを"思う"描写があるたびにゲッソリしていた。
読了日:9月27日 著者:エドゥムンド・パスソルダン
新装版 UMA大戦 ククルとナギ(1) (KCデラックス )新装版 UMA大戦 ククルとナギ(1) (KCデラックス )
読了日:9月23日 著者:藤異秀明
魔法医師ニコラ (地球人ライブラリー (027))魔法医師ニコラ (地球人ライブラリー (027))感想
東洋神秘等のエキゾチズムだけが数少ない読みどころといった感じの作品。ニコラ博士のキャラクターも正直、微妙で、催眠術を駆使して冒険するのかとおもいきや、作中ではあまり催眠術が活躍していないような…。なにより、肝心の冒険が中途半端に終わっているような、いろいろな伏線が投げっぱなしのような…。そして、冒険が終わった後の話の展開が雑すぎる。とりあえずオチにたどり着くためにガーッと書きましたというのがバレバレで、あんまりいい印象が残らない。設定自体は面白いと思うのだが…。
読了日:9月20日 著者:ガイ・ブースビー,菊地秀行
世にも不思議な物語  世界の怪奇実話&都市伝説 (扶桑社ミステリー)世にも不思議な物語 世界の怪奇実話&都市伝説 (扶桑社ミステリー)感想
面白かった。現実に起こった出来事を再現する、という体で話が構成されていたTVシリーズ「世にも不思議な物語」の小説版。一冊の中に、キッチリと話としてちゃんと終わる話と、話としてちゃんと終わらない話がそれぞれ入っているが、不思議と、惹き込まれるのは「話としてちゃんと終わらない話」。話としてキッチリ終わらないほうが、読後、なんとも言えない感情や不安感に襲われて、変な気分になる。この変な気分になるところが素晴らしいなと。巻末の座談会は、いや、相変わらず平山先生が酷い(笑)
読了日:9月12日 著者:レノア・ブレッソン
その問題、経済学で解決できます。その問題、経済学で解決できます。感想
実は、経済学者の奮闘記という側面もある、珍しい経済書インセンティブ、という言葉はだいぶ浸透してきたし、実際にインセンティブ(金銭的インセンティブの意で使われることが多いが)を使おうという人は多くなってきた。だが、そのインセンティブは「そんな単純に作用するものではない」ということを指摘しているのが本書。50年間で最大のイノベーション、は宣伝文句でもなんでもなく、事実、この本はインセンティブという概念に新しいイノベーションを与えている。下手な自己啓発ビジネス書より遥かに有用性が高いこと間違いなしの一冊。
読了日:9月11日 著者:ウリニーズィー,ジョン・A.リスト
逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズ ケアをひらく)感想
ALSについての様々なことを学べるのもそうなのだが、なにより、一つの本として良く出来ている。「信仰・意思疎通・生死」は、実は病人に限った問題ではなく、生きている自分たちにだって大いに関わりがある話であるはずで、そういうところを考えさせられる本でもあるのではないか。もちろん、ALSの問題を多少なりとも”リアリティ”を持って知ることができる本でもあるのだが。
読了日:9月5日 著者:川口有美子
スタープレイヤー (単行本)スタープレイヤー (単行本)感想
これは面白かった。とても標準的な設定で綺麗に話が作られている。ちょっとあちこちの設定に既視感があるのが難点とも言えるし、これが夜市とかに見られたこの作家独特の魅力が出ているかというと、それはちょっと微妙だったりもするのだが。そういったところを気にしなければ、普通に面白い物語として読めるはず。
読了日:9月4日 著者:恒川光太郎
剃髪式 (フラバル・コレクション)剃髪式 (フラバル・コレクション)感想
他の人よりもはるかに真面目に読んでいた。ふざけているようで、これは相当真剣にテーマが描かれているような気がしたので。特に全体に渡って「強い欲求」がやたらよく描かれている。題の「剃髪」とは、近代化のことだが、それと同時に「欲求を失うこと」の象徴にも読めるようなぁ、この小説、と。
読了日:9月2日 著者:ボフミル・フラバル
ペンギンの音楽会ペンギンの音楽会感想
追伸の内容に唖然としてしまったので、本編がどうでもいい。
読了日:8月29日 著者:エルケハイデンライヒ
永遠のアダム永遠のアダム感想
ミシェル・ヴェルヌが発表したという、永遠のアダムが傑作だった。この設定で、永劫回帰思想に繋げるのは素晴らしいといえる。もちろん、他のジュール・ヴェルヌ短編も素晴らしい。特に「老時計師ザカリウス」が自分は強く好みかもしれない。今の時代に読んでみると、マジックリアリズムの気配すら感じさせるところがあり、非常に良い刺激になった。こちらも傑作と言って差し支えないだろう。他の二編「マルティン・パス」や「空中の悲劇」も、相当面白いので、読んで損する本ではないだろう。
読了日:8月28日 著者:ジュール・ヴェルヌ
狼少女たちの聖ルーシー寮狼少女たちの聖ルーシー寮感想
かなり唐突に、本編からするとあまりにも違和感が大きすぎる比喩や、描写がドンと出てくるのが妙に面白い。明らかに読んで印象に残るのは、本編の話の流れよりも、枝葉の描写の方だ。そして、急に本編の雰囲気を破壊する描写がちょこんと出てくるところが、チグハグな話の設定と相まって、作品全体に漂う不思議さを形成しているように思う。もちろん、話自体も相当不思議な話が多いのだが。
読了日:8月27日 著者:カレンラッセル
ワルラス経済学入門―「純粋経済学要論」を読む (岩波セミナーブックス (15))ワルラス経済学入門―「純粋経済学要論」を読む (岩波セミナーブックス (15))
読了日:8月21日 著者:根岸隆
戦争文化論 上戦争文化論 上感想
やっぱ、最終的に「ちょっとクレフェルトは偏って物事を見過ぎだ」って思えてしまうところが難点なのだよなぁ。といっても、これはクレフェルトが毎回やらかしていることでもあるんだけれども…。文章は、戦争の変遷よりもこっちの方が遥かに簡潔で読みやすい。とても刺激的で、戦争のみならず文化というものに対して、より深く考えるきっかけを与えてくれる本であることも間違いない。でも、クレフェルトの見解にはどこか賛同出来ないところがある。
読了日:8月12日 著者:マーチン・ファン・クレフェルト
宇宙授業宇宙授業
読了日:8月8日 著者:中川人司
宇宙天気―宇宙の天気予報はできるのか?宇宙天気―宇宙の天気予報はできるのか?
読了日:8月5日 著者:篠原学
抱擁抱擁感想
オチがありきたりにも程がある。中盤の時点でどういうオチになるのか分かってしまった。文体とか、構成とか、全体的に優等生な小説だとは思うけど、優等生過ぎて「うわ、どっかで見たことあるものばっかりしかない!」となってしまった。唯一、見たことがなかったのは、主人公が、ライバル心から、緑子を強く愛したいと思うようになっていくという、ここの要素。だが、ここは、あんまり作品そのものと関係無かったようで…。
読了日:7月30日 著者:辻原登
キストキスト感想
屍体とキスをして、屍体の上で踊るのが好きという、大変に倒錯した性癖を持つ女性の物語。怪奇小説にも近いところがあり、話のあらすじ自体は本当に他の怪奇小説に存在してそうなものだ。が、実のところテーマとしては屍体や倒錯した癖のようなものではなく、もっと根源的な、「生」というものについてこの著者は描きたかったのだろうと思う。生と結びつく意味での「性」もしかりだろう。「性」と「生」から最も離れている「屍体」に「生」と「性」を見出すことで、「生」の神秘性を浮かび上がらせようとしたということなのだろう。
読了日:7月29日 著者:バーバラガウディ
カラ―孤独なハヤブサの物語カラ―孤独なハヤブサの物語感想
うーん…。
読了日:7月25日 著者:J.F.ガーゾーン
オルタナティブロックの社会学オルタナティブロックの社会学感想
「波」と「渦」という考え方は至極どうでもいい(この概念は定義が曖昧すぎて、その人のさじ加減でどうにでもなってしまう)と思ったが、ロックのスポーツ化に関しては、これは自分も感じていたことだし、これを明言する価値はあったかなと思う。が、日本のロックシーンの話になった途端、急に引用が連発され、なんだか、体系等ばかりを追いかけてしまい、結果、「こうやってロックは変わっていきましたとさ、ちゃんちゃん」という話を読まされただけだったのではないかと。また、個々のアーティストの捉え方にも強い疑問が残る。
読了日:7月24日 著者:南田勝也
魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉 (MF文庫J)感想
うん。
読了日:7月23日 著者:川口士
戦争の変遷戦争の変遷感想
勘違いしてはいけないが、この本は「戦争論」の上に更に成り立っているということだ。確かに「戦争論」を俎上に上げ、非難しているが、それは「戦争論」そのものを認めない、ということではない。ただ、戦争論では説明のつかなかったことを、この本で説明を付けた/付けようとしたということだ。だからこそ、「On On War」なのだ。
読了日:7月20日 著者:マーチン・ファン・クレフェルト
生還生還感想
院内が一番僕にとっては面白かった。幻想小説的というか、珍しくSF的な要素を入れて、慎太郎らしからぬ内容になっているところが、なかなか魅力的だなと。他の二編も相当面白いのだが、残念ながら、僕は「存在」というものに生来から興味が無いので生還はそこまで胸に来なかった。孤島は一番、最後のセリフがバシッと決まっていて、おーっ、となる。
読了日:7月18日 著者:石原慎太郎
波間のこぶた (角川文庫)波間のこぶた (角川文庫)感想
うーん…
読了日:7月8日 著者:銀色夏生
駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)駄作 (ハヤカワ・ミステリ文庫)感想
ちょっとコーエン兄弟の「バートンフィンク」を思い出すようなところがありつつ、けれども、基本的には非常にヘンテコなサスペンス小説だった。サスペンス、と書いたが、作者が本当にサスペンス小説つもりで書いたのかどうかは分からない。この本自体が、なにかの隠喩になっていると読み取れる部分があるからだ。ともかくとして、ラストのシュペルヴィエルを思い出させるような、幻想小説的な展開といい、僕としては非常に面白い小説だった。
読了日:6月30日 著者:ジェシー・ケラーマン
穴感想
ゆきの宿が特に素晴らしい。
読了日:6月24日 著者:小山田浩子
アインシュタインの夢アインシュタインの夢感想
アインシュタインがこんな夢を見ていたかもしれない、というていで、様々に時間を思考実験してみた小説。哲学的な時間の話もあれば、相対性理論より更に後の物理学である、不確定性の話まで出てきたりしていて「アインシュタイン、絶対こんな夢見てるはずないだろ」と思うこと多しだが。ただ、思考実験としての面白さ、哲学としての面白さというのはちゃんと出ている。
読了日:6月23日 著者:アランライトマン
あるときの物語(下)あるときの物語(下)感想
印象が「静か」だった上巻に対して、話が一気に「動く」印象のある下巻だった。ついつい先を読み進めたくなる展開の連続だったので、あっという間に楽しんで読みきってしまったが、同時に、上巻にあった静かな魅力が失われたような気もする。また、思いの外、終わりで展開されるある哲学及びある物理学的な解釈が「またそれか」というか、既視感があるというか…。話は面白かったが、僕はこの作者の考え方や物語の主張自体は「苦手だ」と思った。正しい正しくないではなく、苦手。
読了日:6月20日 著者:ルース・オゼキ
あるときの物語(上)あるときの物語(上)感想
ナオの、この設定にも関わらず「静かな小説」という印象を受けた。仏教の思想を濃く反映しているせいかもしれない。日本文化を相当リサーチしたと思われる描写が数々あり、そのせいか、文章はだいぶ読みやすい。リサーチの度合いも結構深く、話になぜか大地丙太郎監督の十兵衛ちゃんまで出てくるのだから驚きだ。注釈がそこそこ間違っていたり、「その描写は誤解を招くぞ」と思う言い方になっていたりするが、まあ、おそらくはわざとギャグでやっているんだと思われる。ただ、これ日本人以外は誰もギャグだと思わない気もするが…。
読了日:6月15日 著者:ルース・オゼキ
のはなししのはなしし
読了日:6月13日 著者:伊集院光
女郎蜘蛛 (創元推理文庫)女郎蜘蛛 (創元推理文庫)感想
中盤の主人公がだんだん追い詰められていく過程が素晴らしい。もう、とにかく心が折れることの連続でこれがたまらない。主人公の手では事態を止めることができないという無力感からくる恐ろしさがひしひし伝わってくる。そこから逆転していく展開もなかなか見事。なによりも僕が興味を持ったのは、自分が疑われているんじゃないかという思い込みで、主人公が必至の思いで捜査をしはじめる、というその話の構造。パトリック・クェンティンには、わりとこの形式があるようなので、他の作品も是非読んでみたい。
読了日:6月6日 著者:パトリック・クェンティン
とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選感想
とても奇妙な小説だと思う。そして、味が濃い。濃すぎて一気に読むのは無理。また、強烈なルサンチマンを持った登場人物が誰かを執拗に(あるいは狂ったように)恨むという話が多く、しかも、なぜか、多くの作品で心中に近い状況になるという妙な一致に、変な気分になってしまう。表題作が案外「もうちょっと盛り上がるのかなー?」と思えるよりもはるか前であっさり終わってしまうのでこれが意外と肩すかしかもしれない。また、最後の一編は逆に突き抜けすぎで、ちょっと他人には薦められない。個人的には、こういう話は好きだけれども。
読了日:6月5日 著者:ジョイス・キャロル・オーツ
ヘヴン・アイズヘヴン・アイズ感想
これは無理
読了日:5月27日 著者:デイヴィッドアーモンド
Lost TernLost Tern感想
リトルターンほどではないものの、ロストターンにも、少し恥ずかしい部分がある。人生について考える本なのだろうけれども、なんだろう、この「浅さ」は。原文には形而上学的な議論も含まれているというが…。
読了日:5月18日 著者:ブルックニューマン
リトルターン (集英社文庫)リトルターン (集英社文庫)感想
うーん。ちょっと五木寛之のせいなのかわからないけど、なんだか、こっ恥ずかしいところが残念かなと。
読了日:5月18日 著者:ブルックニューマン
肩胛骨は翼のなごり肩胛骨は翼のなごり感想
全体の話の構造として考えると「え、そこに山場を置くの?」と言いたくなる場面に山場があったり、最後まで話を読んでみた結果「で、この話なんだったの?」と言いたくなるような、どう解釈しても、なにも残ってないラストが待っていたりといろいろ問題はあるが、それを補っても余る魅力「汚いのだけれども綺麗でもある不思議な雰囲気」というものを十分に堪能できたので僕としては満足。この本はマジックリアリズム的な文章とミナの面白すぎるキャラクターこそが、ある意味で重要かなと。
読了日:5月16日 著者:デイヴィッドアーモンド
王ドロボウJING新装版(7) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(7) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
王ドロボウJING新装版(6) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(6) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
王ドロボウJING新装版(5) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(5) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
王ドロボウJING新装版(4) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(4) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
王ドロボウJING新装版(3) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(3) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
王ドロボウJING新装版(2) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(2) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
王ドロボウJING新装版(1) (KCデラックス)王ドロボウJING新装版(1) (KCデラックス)
読了日:5月11日 著者:熊倉裕一
赤い鳥傑作集 (新潮文庫 つ 1-7)赤い鳥傑作集 (新潮文庫 つ 1-7)感想
全体的になかなか良かった。児童文学は意外にも救いようのない話がそこそこあったりするものなのだなと感心。前期は、元ネタがあると思われる話も多く存在しており(特に、湖水の女のエピソードを、僕は千一夜物語で読んだ記憶がある)中期以降から、それがなくなってオリジナリティが出てくるが、それと同時に、あまり話に個性がなくなり、どれも似たような雰囲気の話になっていく。解説によると、徐々に三重吉の理想に雑誌が沿うようになり、最後は身内でつくっているような状況だったとのことで、納得する。
読了日:5月8日 著者:
拳銃―家族たちの戦後史 (文春文庫 (238‐7))拳銃―家族たちの戦後史 (文春文庫 (238‐7))感想
話自体は面白いのだけれども、なんなんだろう。この面白さとまったく合わないほどの、うっすい、現代批判的なテーマは。そこだけが鼻につく。そこがあまり出ていない、最初の三篇は誰が読んでも面白いと思う。
読了日:4月20日 著者:笹沢左保
笑う月 (1975年)笑う月 (1975年)感想
エッセイというには、「嘘じゃないのか」と言いたくなるような話が多いなぁと思っていたら、最後の方にはただの小説が収録されている。おそらく、安部公房がエッセイの連載でこれを書いたということなんだと思われるが、読んでいるとそこそこ無駄にびっくりすることは間違いない。小説もエッセイも面白いので構わないのだが…。僕は「発想の種子」のアムダの話と、「アリスのカメラ」がかなり好き。
読了日:4月15日 著者:安部公房
脳の中の「わたし」脳の中の「わたし」感想
実験の結果分かったことをわかりやすく噛み砕いて伝えている本。逆に、考察等を一切行っていないし、噛み砕いた分(なるべく努力はしているのが分かるが)細かいところのフォローがどうしても足りないところもあったりするけれど、イラストと相まって、なかなかの良書かなと。これを読んでから、他のもっと専門的な本を読むと、理解が数倍早いと思う。
読了日:4月12日 著者:坂井克之,榎本俊二
幼なじみ (Coffee Books)幼なじみ (Coffee Books)感想
うーん。
読了日:4月9日 著者:佐藤正午
極北の地にて極北の地にて感想
極限状態におかれてもなお執着する人間の獣性的な生、及び、社会によって消えているそれ、という意味では、コーマック・マッカーシー的なテーマが貫かれているといえる。(発表年代を追って言うなら、コーマック・マッカーシージャック・ロンドン的なのかもしれないが)マーカス・オブライエンの行方だけ少し毛色の違う、ユーモアのある話なのだが、他の短編は基本コレである。それがいい。
読了日:4月6日 著者:ジャックロンドン
僕って何 (1980年) (河出文庫)僕って何 (1980年) (河出文庫)感想
前半の全共闘の争いだとか、そういうものがオママゴトにしか読めなくてどうにもこうにも、「どうでもいい」という印象が付き纏ったが、後半、特に終盤の機動隊が出てきた辺りから、僕が感じていた「どうでもよさ」がどんどん作中で暴かれていき、最後に主人公の不確かさがはっきり残る――という構成になっていて、最後まで読むと「なるほど、考えたな」と。
読了日:3月29日 著者:三田誠広
セヴィニェ夫人手紙抄 (岩波文庫)セヴィニェ夫人手紙抄 (岩波文庫)感想
ちょっとした愚痴や、今日はこんなことがあって大変だったのよ、なんて話や、お隣さんが火事でねぇ…なんて話まで入っているところ、いつの時代も変わってないものは変わってないのかもなぁ、なんてことも思ったり。あと、この人、大袈裟だなーとも。だからこそ、上手い文章表現が光っている瞬間もあるし、大袈裟な表現に、セヴィニエ夫人の気持ちの強さがよく現れている。
読了日:3月26日 著者:セヴィニェ夫人
帽子の物語帽子の物語感想
とても面白い。
読了日:3月25日 著者:永森羽純
ソートン・ワイルダー一幕劇集 (1979年)ソートン・ワイルダー一幕劇集 (1979年)感想
演劇は読み慣れてないからちょっと苦労したが、なるほど。
読了日:3月24日 著者:
パブリッシュ・オア・ペリッシュ―科学者の発表倫理パブリッシュ・オア・ペリッシュ―科学者の発表倫理感想
今コレを読まなくてどうする。という内容。STAP細胞をめぐる様々な騒動に関心のある人は、必ず一読すべきものではないかと思う。ヘンドリック・シェーンや、ES細胞に関することなど、まさにタイムリーすぎる一冊かなと。
読了日:3月21日 著者:山崎茂明
スターティング・オーヴァー (メディアワークス文庫)スターティング・オーヴァー (メディアワークス文庫)感想
僕はそれほど
読了日:3月20日 著者:三秋縋
電力システム改革をどう進めるか電力システム改革をどう進めるか
読了日:3月17日 著者:八田達夫
壁抜け男 (異色作家短篇集)壁抜け男 (異色作家短篇集)感想
面白かった。基本的に、話がどんどん「横滑り」していく短編が多いなという印象。最初の主題から、違う話にいつの間にか変わってしまうのだ。この話の切り替え方、設定の広げ方の妙で非常に惹かれた。また、案外、経済学的な感覚のある展開(「カード」の流通の仕方や「よい絵」における、闇市場のところなど)があり、話全体はシュール気味あるいは幻想的でありながら、実は現実を率直に捉えている面もあることがわかる。この塩梅が読んでいて心地いいなと。
読了日:3月16日 著者:マルセルエイメ
ザンジバル・ゴースト・ストーリーズザンジバル・ゴースト・ストーリーズ感想
勝手に作者がつくり話を、その土地の怪異譚と偽り(作者も偽り)書いているという形式に、ものすごく「東方見聞録」や「東方旅行記」といったものを連想する。遠野物語というよりはこの本の魅力はそっちかなと。
読了日:3月11日 著者:飯沢耕太郎
統計学入門 (基礎統計学)統計学入門 (基礎統計学)
読了日:3月11日 著者:
辺境の館辺境の館感想
なんか、変なんだけど、その変さがいいという小説。ただ、これなら、普通の文章表現を使った小説にしても面白かったような気もするけど。
読了日:3月4日 著者:パスカルキニャール
千夜一夜物語―バ−トン版 (バベルの図書館 15)千夜一夜物語―バ−トン版 (バベルの図書館 15)感想
「人が話している物語の中にいる人が話している物語のなかにいる人が話している――」この入れ子構造がたまらない。入れ子構造でなくても、かなりシュールな突拍子もない話ばかりでそこの時点で既に相当面白いのだが。
読了日:2月28日 著者:
魔女 (角川文庫)魔女 (角川文庫)感想
幻想文学的で、非常に面白い小説だった。桜庭一樹とかの小説が好きな人は読んでみたらいいと思う。結構似ているところがあるなあと。個人的にそこまでフェミニズム的な話に持っていく必要もあんまりなかったような気がするけど、この短さでまとめるならそこを落としどころにするのが妥当かも。
読了日:2月27日 著者:坂東眞砂子
聖なる酔っぱらいの伝説 (白水Uブックス)聖なる酔っぱらいの伝説 (白水Uブックス)感想
「皇帝の胸像」が面白かった。聖なる酔っぱらいの伝説は、僕自身にとってはあんまり…。なんとなく、この作者の世間観に嫌気が差したというか。
読了日:2月26日 著者:ヨーゼフロート
狼の泉狼の泉感想
かなり難解な内容の詩集。注釈さえ難解だ。しかし、かなり面白い詩集だ。トリスタン・ツァラを初めて読む人が手を出すような詩集ではなかったのかもしれないけれど、僕は大いに楽しんで読んだ。
読了日:2月24日 著者:トリスタンツァラ
カフカ式練習帳カフカ式練習帳感想
内容としては、断片的で終わってしまう小説らしきものの集まりなのだが、僕はこの本のそういうところは好きだ。が、長すぎる。というか、この本が長いことに意味がなさすぎる。この手法ならば、もっと短く終わらせることだって出来たはずだ。なぜなら、どこで終わってようといいのだから。で、なぜこの長さにしたのかさっぱり分からない。最後に掛けて、急に震災のことを言及しだすのは、この本の最後あたりを書いているときに震災にあったからだと思うが、一冊の本として考えると話に出すのが急すぎて非常にどうでもいい。
読了日:2月20日 著者:保坂和志
俺は、虎とロケットと君が好きだ。 (幻冬舎文庫)俺は、虎とロケットと君が好きだ。 (幻冬舎文庫)感想
男らしい男じゃなくて、だめんずじゃねぇか。
読了日:2月11日 著者:三代目魚武浜田成夫
見知らぬ町 (Coffee Books)見知らぬ町 (Coffee Books)感想
このなんともいえない、牧歌的なようで、とてつもなく通底する怖さがたまらない。幽霊とか、そういうものではない、存在することそのものに対する怖さ。文章もとても描写が上手い。この、装丁もたまらない。文章をぶつ切りするように絵が挿入されているのだけれど、そこがまた不気味さをよく醸し出している。
読了日:2月7日 著者:坂東眞砂子
双頭の船双頭の船感想
池澤夏樹という作家が自分に合わないことを再確認することになった。
読了日:2月7日 著者:池澤夏樹
異国の迷路異国の迷路感想
追悼に。言霊の力が作用する短編が目立つという印象。他の坂東眞砂子の作品も、読み返せるといいなぁ…。
読了日:1月31日 著者:坂東眞砂子
夜市 (角川ホラー文庫)夜市 (角川ホラー文庫)感想
面白かったが「夜市」の後半の展開が分かってしまったのが、ちょっとなぁ。風の古道の方が、僕は好き。こっちのほうが実は、この作家が持つ「奇妙な感じ」が作品全体からよく出ていると思う。夜市のほうが描写としての奇妙さは多いのだけど、話の構成が奇妙なのは「風の古道」といった感じ。
読了日:1月29日 著者:恒川光太郎
海底バール海底バール感想
自分にはイマイチの話もあったりしたが(特にオレロンの既視感が半端じゃないオチはどうしたものか)でも、「恋する宇宙人」や「シミゼ」など、読んでいて思わずこちらがクスリと笑ってしまう、奇妙奇天烈な文章はかなり堪能した。何篇か、「この文章実験はとっくのとうにやり尽くされただろ!」と言いたくなるようなものもあったりするが、基本的には、文章がだいぶ変わっている作家であることは間違いない。あと、翻訳者が絶妙に良い仕事っぷりを発揮していて、それで余計に笑えるのかもしれない。
読了日:1月23日 著者:ステファノ・ベンニ
蘭郁二郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)蘭郁二郎探偵小説選〈1〉 (論創ミステリ叢書)感想
蘭郁二郎は主に長編となると、中盤や終盤の展開がグダグダになるという欠点があるが、これに収録されている長編もやっぱり、その欠点を抱えている。しかも、「南海の毒盃」の一部のトリックは同著の短編「鱗粉」の使い回しであったりする。ただ、短編は少年探偵王にしても、月澤シリーズにしても、後の方になるに連れて抜群に面白くなってくる。文章表現も惹きつけられる魅力が出ている。林田はな子の変名で書いた二編はどちらも面白い。特に「花形作家」は、ひょっとすると蘭郁二郎の作品の中でもかなりの傑作に入るものかもしれない。
読了日:1月22日 著者:蘭郁二郎
雪月花黙示録 (単行本)雪月花黙示録 (単行本)感想
ものすごいメタフィクションオチに、「恩田さんが…!?」とびっくり。しかも、及川光博のファンだったのか…。
読了日:1月16日 著者:恩田陸
ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)ユゴーの不思議な発明(文庫) (アスペクト文庫)感想
絵があるからこそ、意味のある物語で、そこにかなり感心した。翻訳は金原瑞人さんで、非常に読みやすいことは間違いなし。
読了日:1月13日 著者:ブライアンセルズニック
科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス)科学を語るとはどういうことか ---科学者、哲学者にモノ申す (河出ブックス)感想
想像以上に平行線の議論で驚いた。案外、須藤さん側が細かく矛盾するようなことを言っている。確かに、物理屋は基本的に「スケール」ごとに切り分けて物事を判断してしまうので、物理屋の中では、この考え方は矛盾してないことになるんだろうけれども…。そこの価値観と、哲学の全スケールを通す考え方をしようとする価値観は、相容れるはずもなかったのかも。ただ、この本の目的は相互理解じゃなくて「物理屋、哲学屋の徹底議論から生まれるもの」だと思うので、そういう意味で、目的は達成したのかなと。
読了日:1月9日 著者:須藤靖,伊勢田哲治

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